Nintendo Switch の「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」。発売以来、世界中のプレイヤーがこのゲームに夢中になっています。例にもれず筆者もゲーム内での生活を楽しんでいますが、あつ森をプレイしていると、この世界観を楽しんで貰うために、作り手が用意した数々の工夫がみつかります。

その中には、実際の世界でも応用のできそうな考え方や仕組みに気づく事もあるので、そういった意味でも価値あるゲームと言えそうです。

この記事ではなぜ「あつ森」は繰り返しの作業を効率的に出来ないように出来ているのかについて考え、その感覚を現実世界での生活に応用する方法を紹介します。

わざと面倒に感じさせるべく作られている様に見える、アサリ掘りと撒き餌DIY

多くの「あつ森」プレイヤー『あつ森の代表的な単純作業』と位置づけそうな作業と言えば、アサリを掘って魚のまき餌を作る工程ではないでしょうか。

ゲーム内ではDIYとして、プレイヤーの集めた素材を別のものに加工することができます。

魚釣りに使う撒きエサを作る工程

  1. DIYや購入でスコップを用意する
  2. 浜辺でアサリを探して掘り出す
  3. 作業台にアサリを持っていき、DIYで「魚のまきエサ」を作る

特に、この工程の2、3番目の撒きエサ作りは、拾ったアサリ1つ毎に行う必要があります。あつ森をプレイするプレイヤーの多くが、この作業を面倒だと感じられるのではないでしょうか?

2、3番目に比べると頻度は少ないですが、1番目の工程で使用するスコップも、アサリを掘るために沢山使っていると、時々壊れるので、その都度用意する必要があります。

魚のまきエサを撒く瞬間。現実とは違い、すぐに釣れる魚の魚影が出てきます。


こうやって作った撒きエサを利用することで、魚釣りを効果的に行う事ができます。
あつ森には様々な種類の魚が存在しており、もしすべての種類の魚を釣って集めようとすれば、膨大な数の魚釣りを行う必要があります。

しかし、このアサリを一つ一つ加工しないと撒きエサを作ることはできません。例えば、物づくりが大きなコンテンツである事で有名な別のゲーム Minecraft(マインクラフト/マイクラ) であれば、一度に複数の素材を加工してアイテムを作ることも可能です。

マイクラで大量に利用することになる「たいまつ」をまとめて作成しているシーン。一瞬で数十個のアイテムをまとめて作成できます。

もちろん、マイクラにはマイクラ特有の非効率さ、不便さがあります。おそらく、これらのゲームの非効率な点は製作者が意図的に用意しているものも数多く含まれるはずです。

不便、非効率にする事で体験に味わいが生まれる

この作業で使う道具「スコップ」「つりざお」は繰り返し使っていると、時々壊れます。これを改めて用意するのも一手間かかります。

ゲームの仕組みとして、あつ森でも魚のまきエサ作り作業をまとめて行えるように作ることは、それほど難しいことではないでしょう。
システムを調整すれば一度に大量のまきエサを作り、まとめて沢山の魚が釣れるようにする事は可能ではないかと考えています。

しかし、制作側はあえて「まきえさ一括生成機能」等の便利機能を用意していないように感じます。それは、そうした方がゲーム体験に味わいが生まれると、制作側が考えての仕組みではないかと考えています。

ゆっくりプレイする事で増える楽しみ

あつ森の世界では、月ごと、時間ごと、場所ごとに、釣れる魚が大きく変わります。この記事の執筆時である6月に、北半球に設定した島であれば、海ではジンベエサメが釣れ、崖の上の川でイワナが釣れ、日中の池であればライギョが釣れます。

レア魚「ジンベエザメ」を釣り上げる瞬間! 筆者、このスクリーンショットを撮影するために頑張りました(笑)

この島では、少し時間や場所が変われば全く違った魚が釣れるようになっています。
特に攻略情報も調べず、思いのままに魚釣りを行っていると、時には「こんなところでアロワナが釣れるなんて!」とびっくりする体験にもつながるでしょう。

釣った魚は、店舗に買い取って貰うだけでなく、博物館に寄贈すれば大きな水槽内で泳いでいるところを眺めることができます。特定のキャラに渡せば、それを見本とした模型を作ってもらうこともできます。もちろん、自宅や野外の好きな場所の水槽に入れて飾る事も出来ます。

ジンベエザメはレアな大物なので、買取価格は高額。(手軽に釣れるアジの買取価格は150ベル)
博物館内の水槽。専門家から見てもよく考えて作られていると評価されるクオリティとの事です。

体験の味わいが出ることで単純なタスクへのモチベーションが保たれる様にできる

ここまで、魚釣りが楽しいものであるかのように紹介してきましたが、実は、それらの体験の一つ一つは、実はそれほどドラマチックなものではなく、大きな楽しみに感じる人は少ないものでしょう。しかし、単調に見える繰り返しの毎日に小さな華を添えるので、プレイヤーはついつい単調な魚釣りに繰り返しに取り組む事になります。

この部分が効率化されすぎていると、魚釣りの体験が希薄なものとなってしまい、ゲームを毎日続ける楽しみやモチベーションが薄くなってしまうことにつながるのかもしれません。

システムが便利になるのは良いのですが、どうぶつの森の世界で毎日楽しんで貰うことを目的としているゲームとして、便利で効率的に動けるようにしすぎる事は、作り手の狙いからは外れることと言えそうです。

もちろん、あつ森はアップデートのあるゲームなので、今後のユーザーの声などの状況次第では一度に複数のDIYを行えるようにする仕組みが用意される事もありえるでしょう。しかし、どんなアップデートが来ても、どこかでわざと不便さを残して、あつ森ならではのゲーム体験の味わいが表現されているのではと感じています。

現実世界でも、あえて不便にしたり、時間をかける事で物事が進みやすくなる可能性

現実の世界でも、ToDoリストやスケジュール管理ツールを利用して、仕事や生活の効率化に手を付けはじめると、全て効率化したくなり、非効率な行動に対して否定的な考えになりがちです。しかしそれをあえて崩した方が物事が進む可能性もあるのではないでしょうか。

効率化ではなく、不便でも味わいの出る様にするアプローチ

単調で非効率なタスクを毎日行うのは楽しくなく、気が滅入ります。これを解決するたに、効率化を目指すように考えるのは、多くの場合正しい考え方、正しい方法となります。

しかし、どんなに効率化してもうまく進める事ができない事もあるのではないでしょうか?
こんなときは、あつ森の仕組みを見習って、あえて不便な形で取り組んでみるのはいかがでしょう?

あつ森は、効率的にゲーム内イベントを消化したいプレイヤーにとっては、やや煩わしいと感じる行動を強制される仕組みのゲームですが、単純で非効率な作業を生活を楽しんで続けられる仕組みや演出が盛りだくさんです。こういった所に着目してプレイすることで何かのヒントを得られるかもしれません。

効率化して急ぎすぎると、飽きが早くなったり、達成しても空虚な気分になることも

「あつ森」に限らず、ほとんどのゲームは非効率や不便さの中を楽しんでもらう仕組みのものとなっています。

もし、究極的に効率の良いゲームがあったとすると、そのゲームはきっと起動した途端にエンディングが始まるゲームになるでしょう。そんなゲームは楽しくないでしょうし、翌日以降に遊ぶ気は起きないでしょう。

実際の人生においても、効率的に動けすぎると、逆に楽しく無く、続けるモチベーションの維持が困難になる可能性があることには着目しても良いのではないでしょうか。

不便さや非効率を積極的に味わってみる例

不便な仕組みだからこそ生まれる体験、不便な仕組みに着目して、自身の行動の参考にしてみてはいかがでしょう?
よくある例を紹介してみます。

トレーニング・ダイエット

主な目的

  • 見た目の良い体型
  • 健康維持・促進

効率化の例

  • 体にも金銭も負担のかかる集中トレーニングメニューを行う
  • 極端な断食に取り組む

非効率化の例

  • 毎日ウォーキングをしている場合、外の季節の変化を味わえる
  • 長い期間を掛けて取り組んで作り上げた体は、少し休んだだけでは衰えにくいものになる
  • 頻繁に自分の身体と向き合う事で、健康状態に対する意識も高くなる

コーヒーを飲む

主な目的

  • 眠気覚まし
  • リラックス効果

効率化の例

  • 缶コーヒー、インスタント、コーヒーマシンなど利用する

非効率化の例

  • 焙煎、豆挽きを行って丁寧に淹れる事で、味わいの違いが分かるように
  • 手間を少しかける事で、良い気分転換や眠気覚ましになる事も

鉛筆を削る

主な目的

  • 鉛筆の線を引きやすくする

効率化の例

  • 電動鉛筆削りを使う
  • 鉛筆ではなくシャープペンシルを使う

非効率化の例

  • カッターナイフや小刀で削る時間が書く文字や絵に向けての気持ちを高める効果が期待できる
  • 手で削った不安定な形の鉛筆な芯が、思わぬ面白い線を引けることにつながる事も

継続を重視するタスクでは、効率化より、楽しさ、味わい深さを得られる方法をおすすめします

タスク管理パートナーでは、サービスの性質上、効率的に動く提案をすることが多いのですが、一時的に非効率な動きになったとしても、長期的に良い状態のキープを実現させる事が大切な役割だと考えています。

効率化を突き詰めた動きをしようとしても上手く行かないと感じられる事があれば、お気軽にご相談くださいね。