『独学大全』読書猿著/ダイヤモンド社

本書を読んで、独学をしたくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

本書には独学に関するたくさんの情報がありますが、その中から今回は、独学の際に役立つ本書347ページ掲載の図書館のレファレンスカウンターの使い方と、202ページ掲載の「何を学ぶか自分で決める」から何を学ぶかを決めるヒントについてご紹介します。

こちらのブログでは、学ぶ「何か」をあなたの身近なお困りごとを本や資料で解決しようということを、まずはおすすめします。そんな時に図書館はあなたの強い味方になります。

元図書館司書が教える図書館の使い方

私は以前図書館で働いていた図書館司書です。その経験を活かして、図書館の活用方法をお伝えします。

本書には図書館の使い方も書いています。今回ご紹介したいのが、本書でも紹介されているレファレンス(調査相談)です。図書館は本を借りるだけの場所でも、勉強するだけの場所でもないことを知って、どんどん活用して欲しいと思っています。

本や資料で回答できることは何でも聞いていい

今回のブログのタイトル「年を取るとどうして頑固になるのか」、今回お願いしたレファレンスです。

え?そんなことを質問してもいいんですか?

本や資料があるものであれば何でも回答してもらえます。遠慮なく、どんどん質問しましょう。

図書館によっては、メールや電話での調査相談も受け付けています。そちらも合わせて活用しましょう。

ちょうど勉強していることで分からない問題があったらから答えを教えてもらおう!

サトウさん、残念ながらそれは難しいと思います。
レファレンスで回答できないことは、宿題の回答、人生相談、古書の鑑定などです。こういった個別の問題には、資料がないので回答できないんですね。

何でもいいわけではないんですね・・・

自分で調べたことがあれば伝える

事前にネットや本、雑誌などで調べたことがあれば、こういうことは知っています、調べています、というのを伝えることでより、知りたいことを正確に伝えることができます。

調査時間短縮のためにも、あなたが調べたことを伝えるのはおすすめです。

レファレンスってどんなふうに行われるの?

司書になるために、またレファレンスも仕事で受けてきましたが、はるか昔のことです。

今回ふと疑問に思った、この問いについてまずネットで調べました。いくつかネットや雑誌の記事を見つけたことと、本を1冊発見しました。

ここまででした。長らくやっていないとはいえちょっと情けない・・・。もっと資料はあるはずなのに。

私が検索できた本はこちら。

『年寄りの話はなぜ長いのか』高田明和著/東洋経済新報社 2005年

現役図書館司書と比べてみるとどうでしょうか?

図書館でのやりとり

今回は大阪市立中央図書館にレファレンスをお願いしました。*ブログ掲載許可は取っています。

年を取るとどうして頑固になるのか?ということについて、医学的に問題がなく、自然な老化で起こる理由について知りたいと思います。調べたのは、ネットでいくつかの記事と図書館で本を1冊(タイトルも伝える)見つけました。

図書館員パソコンに向かう。

「意外にありそうでなさそうですね・・・
いくつか本があることと、精神老人医学(請求番号493.75)という分野になるようです。
五大紙(読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞・産経新聞)のデータベースも確認したところ、新聞記事ではエッセイ的なものが多く、ご希望のものではないようです。
CiNii(論文、図書・雑誌や博士論文などの学術情報が検索できるデータベース・サービス)では頑固という単語ではヒットしないので・・・続く」
*(商用)データベースは図書館で購入している、インターネットで提供される有料の情報です。

10分程度でこんな感じで調べてもらいました。

図書館は本のテーマごとに請求番号が付けられています。なので、493.75と請求番号がついてある棚には同じ精神老人医学の本が他にもあるということです。
また、雑誌、新聞、論文といった資料も合わせて調べてもらうことができます。

ちなみに調べてもらった本はこちら。

『精神科医が見つめた老いに適応できる人できない人』町沢静夫著/大和出版 2001年

『人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 』和田秀樹著/祥伝社 2006年

『老いの心と臨床』竹中星郎著/みすず書房 2010年

『感情から老化していく人 いつまでも感情が若い人』和田秀樹著/さくら舎 2013年

『「老い」を生きるということ』竹中星郎著/中央法規 2011年

差は歴然としているかと思います。過去に調査した経験があっても、やり続けなければコツも忘れてしまいますね。

該当の本を借りて読んでまとめたものが以下です。

困った上司やお年寄り、あなたの周りにもいると思います。あなたの周りの困ったお年寄への対応に、そしてあなたのストレスの軽減になると嬉しく思います。

「老い」を理解する

私たちは1年ずつ、1歳ずつ年を重ねていきます。当たり前ですが、その年になるのはみんな、はじめてです。

みんな、60歳も70歳も80歳もはじめて迎えます。何でも当事者にならないと分からないことは多いものです。まずは「老い」ることとはどういうことかを精神老人医学の観点から確認してみましょう。

なぜ人は、年をとると話が長くなるのでしょうか。(中略)年をとると脳が老化してくるので、自覚がなくなるのです。

第一に、年をとると時間が早く流れるようになります。(中略)このために話している時間が長いと思わなくなるのです。(中略)

第二に、年をとると、ちょっとしたことに年齢を感じ、これが老化の始まりではないかと心配するようになります。(中略)つまり自分の考え、体力などに自信を失うことが多くなるのです。すると他人のちょっとした行為、言葉に敏感になり、自分が無視されたり、嫌われたりしているのではないかという思いが浮かびます。このために「俺も、若者は気が付かない人生のコツを知っているのだ(中略)」などと思うようになります。つまり、自分が体験したことや考えていることを、すべて伝えようとするのです。

第三は、自分が話していることをあまり覚えていないという記憶の問題です。

『年寄りの話はなぜ長いのか』はじめにより

「話が長くなる」という事象一つにもいろんな理由があるのですね。

(前略)感情機能や自発性や意欲を司る「前頭葉」という部分から人間の脳の老化が始まるということを知り、その核心を深めているということがある。さらに言うと、感情が老化し、「意欲」や「自発性」や「好奇心」が低下すると、体を動かさなくなったり、頭を働かせなくなるので、他の機能の老化が進むということがある。

『人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 』6~7ページ

なんと「感情の老化」は、個人差はあっても、四〇代から始まるのだそうです。私も他人ごとではありません。

(前略)前頭葉の衰えは、感情が切り替わりにくくなることにもつながっている。嫌なことがあって落ち込む、気分がふさぎ込むのは誰にでもあることだが、中高年になって、落ち込んだらなかなか立ち直れないのは、前頭葉の老化に原因があることも多い。

『人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術』80ページ

今回は調べませんが、病気による原因もあります。躁うつ病など。引用しているように、心の問題については「気のせい」「気にしすぎ」などと年齢の高い方から言われたことのある方もいらっしゃるかも知れませんが、心の病気を知らないゆえかもしれません。

つまり、老人にとっては体の訴えこそが「病気」なのであり、心の訴えは病気に入らないと考えているのです。

『精神科医が見つめた老いに適応できる人できない人』31ページ

老年期はおそらく思春期、青年期とならんで精神病を生じることが多い年代である。

『老いの心と臨床』35ページ

性格の偏りが、年をとって生じたわけではない。若いころは自立していたので、周囲は近寄らないでよかったが、年をとって自立できなくなると、周囲の人々は近寄らざるをえなくなる。そのときに、性格の偏りに辟易して問題視される。

『「老い」を生きるということ』98ページ

人との距離の取り方というのは難しいですが、関わらざるを得なくなった時に、どうしたらいいかのヒントが見つかりますように。

頑固になる人、老いやすい人の特徴、状態

気持ち、状態

  • 不安や心配が多い
  • 相手の意見を聞けない、自分の考えを変えられない(余裕がない)
  • おっくうになる(新しいことができない)
  • 今までのことを続けてやりたい(安心)
  • 考え方を変えさせられることに強い抵抗を覚える(今が快適)
  • 自説を主張する(それ以外の道は拒否する)
  • 新しいことに挑戦する体力、気力がない(そのため現状維持を望む)
  • 現状を長く維持し、変化しないようにしたい(精神的、肉体的老化により)
  • 情報を細かくチェックしなくなり、直感で判断しようとする(判断を誤る)
  • 突然のイライラ、立腹(感情のコントールができない)
  • 家族と一緒に暮らせないことを不幸と考える(自立できていない)
  • 物品に対する執着が強くなり、捨てられなくなる(もう手に入らないという不安)
  • 威張るようになる(いま以上に上を目指そうとしなくなるため)
  • 会話の中に兄弟や子ども、家族のことが頻繁にでてくる(今あるものにしがみつく)
  • 同じ著者の本ばかりを読む(心地よいものばかり選びたい気持ち)
  • あることが気になりだしたら止まらない
  • わからないことがあまり気にならなくなった

本からの抜粋です。「自分だけは大丈夫」とは思えないことばかりですね。

老化といえば、記憶力の衰えが最初にくると思われがちだが、それは実感しやすいからそう思うだけで、じつは記憶力よりも、さらには体力よりも、もっとも先に衰えてくるのが、感情なのである。

『感情から老化していく人 いつまでも感情が若い人』15~16ページ

・動脈硬化、脳梗塞

動脈硬化を起こしている人の脳は、自発性の低下や、泣き出すと止まらなくなる「感情失禁」という現象が起こりやすい。つまり、自分から進んで行動することは少なくなり、感情に振り回されたりしやすくなる。

『人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 』41ページ

中高年になって、とくに脳に動脈硬化や小さな脳梗塞をいくつも起こしている人は、キレやすく、いったん怒りだすと、怒りがなかなかおさまらなくなることが多くなる。

『感情から老化していく人 いつまでも感情が若い人』14ページ

身体的な原因が基になっていることもあるようです。身近な方であれば、病院に一緒に行くことも解決の手段になるかもしれません。

環境

・感情が老化しやすい職業に就いている(公務員、教師などEQを高くする必要がない職業)*EQ (Emotional Intelligence)=心の知能指数

環境が人を作るともいいます。あなたの環境がそうだった場合は、職場以外にも活動の場を広げることもおすすめです。

老いない習慣

それでは、できるだけ老化を遅らせる、あるいはいつまでも若くあるためにはどういったことを行うのがいいのでしょうか?

脳細胞を増やす刺激

第一は運動です。(中略)

第二は刺激的環境です。(中略)人間も一人になって引きこもっていないで、なるべく外に出て、いろいろな刺激を受けるようにしましょうということです。(中略)

第三は勉強です。

『年寄りの話はなぜ長いのか』177~178ページ

目的、喜び、自分が役立っている自覚を持つことも合わせて若々しい脳をつくるのに大事なポイントだそうです。
自分が役立てる、居心地の良い自分の居場所を見つけることも大事ですね。

感情の衰えから、表情がとぼしくなり、まわりの人にはそれが不機嫌そうに見えることもある。実際、表情豊かな人は、あまり不機嫌になったりはしない。

『感情から老化していく人 いつまでも感情が若い人』19ページ

日ごろからの表情も大事なんですね。

「不安」はコントロールできないが、「行動」はコントロールできる。

『人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術』191ページ

多くの人が、前頭葉さえ刺激しておけば老け込まないとか、認知症にならないなどと思っているようだが、単に前頭葉のトレーニングが目的になってしまったのでは本末転倒なのだ。(中略)どんなことでもまず行動してみると、次にやりたいことが見つかりやすいし、何をするにも楽しくなるのだ。

『人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 』58~59ページ

いつまでも若くあるための努力の目的がずれていないか、確認することも大事ですね。

そしてまた、退職後の計画ができている人とそうでない人とでは、痴呆の進み方が違うと言われています。

『精神科医が見つめた老いに適応できる人できない人』163ページ

老いない習慣はなるべく早くに始めることが大事だそうです。そんことやりたくないと思われた方、もしかしたら老化が始まっているかもしれないと疑ってみることも大事かもしれません。

いま自分が怒っている事柄について、あるいは、なににイラついているかを、文章に書いてみることだ。書くことによって、イラついたり、怒ったりしている内容を客観視できるようになる。

『感情から老化していく人 いつまでも感情が若い人』27ページ

書くことの重要性はいつもブログにも書いていますが、怒りやイライラにも効果的だそうです。
こういったことはすぐにできることではないので、今から少しずつ練習して慣れておきたいことです。

新しいことへの挑戦は、前頭葉を使うことになるので、残っている能力を呼び覚まして、可能性を与えてくれる。

『感情から老化していく人 いつまでも感情が若い人』131ページ

意識しないのに、おもしろいものが勝手にやってくることはない。おもしろい光景をおもしろいものにするのは、その人の意識である。

『感情から老化していく人 いつまでも感情が若い人』82ページ

年寄りの冷や水、などと言わずに、積極的に新しいことに挑戦していくことが、心身ともに良さそうです。

私たちが家族や、周囲の人にできること

たとえば、身体の不調や家族についての不満を述べるとき、必ずしも患者はその解決を治療者に求めているわけではない。あるものは身体の苦痛を訴えることで人間関係を持とうとしている。また、あるものは自分の立場の共感者、理解者を求めている。

『老いの心と臨床』82ページ

第一は、まずそのひとを知る。現在の状況に適応させようとして、説得したり、生活スタイルを正そうとしたりすると、関係はこじれる。(中略)

第二は、本人の人生に耳を傾ける。(中略)

第三は、彼とつながっている細いパイプをたぐる。周囲の人々を困らせる偏屈な人物も、「このひととだけ」のつながりをもっていることが少なくない。

『「老い」を生きるということ』108~109ページ

あなたの状況にもよりますが、良き理解者でいることが時には助けになることもあるようです。

少年期、青年期、成人期、中年期と進んできた自分の人生を振り返り、自分なりに納得して進んだものなのか、つまり成功、失敗という単純な結果でなく、自分の力を出し切ったかどうかということに大きな意味があるのです。出し切ったとなれば「私は十分にやった」という自己受容が生まれ、それは老年期に暮らしにゆとりを与えるものだと思います。

『精神科医が見つめた老いに適応できる人できない人』2ページ

この文章がすべてだと思っています。良く老いるために日々を満足して暮らす。老後は突然始まるのではなく、人生の続きなので、今日からできることがあれば取り組んでいきたいですね。

調べるテーマを考える

『独学大全』を読むと、立派なテーマが必要なのではないかと思いました。でも、そもそも学びたい事というのがなかなか思い浮かばない方が多いのではないでしょうか。

テーマを決めて、しっかりと調べて・・・とちょっと取り組むのが大変かと思いますが、「年を取るとどうして頑固になるのか?」というこんな身近なテーマでも調べるといろんな発見があります。そして、私が探した1冊の本だけよりも図書館司書を活用することでいろんな本に出会えることで、知識の幅が広がります。

受付の人はただ座っている人でも、バーコードをピっとしているだけの人でもないんです(図書館司書によって役割は違いますので、該当のコーナーに行ってレファレンスは受けましょう)。

『独学大全』を読んでお久しぶりに勉強したいと思われた方には、練習としてこんな身近なことから調べて学ぶこともおすすめです。

今、お困りごとや不満に思っていることはありませんか?ぜひそれを解決する方法を図書館で調べてみてください。

困った上司やお年寄り、あなたの周りにもいると思います。今回のブログがあなたの周りの困ったお年寄への対応、あなたのストレスの軽減、そして、あなたの将来に向けて考えるきっかけになりますように。

独学はかなり大変なことですが、こんな程度ならできそうかもと思われた方で、それでもなかなか一歩が踏み出せない、継続できない時は、タスク管理パートナーがお手伝いいたします。

資格試験などの仕事に必要な勉強と合わせて、好奇心による勉強も続けていきたいということを改めて『独学大全』を読んで思いました。同じように思われた方、ご一緒に独学を楽しみましょう。
始めることも続けることも、タスク管理を活用することをおすすめします。

YouTubeの動画もご覧ください

学ぶことがお久しぶりの方への始め方、続け方についてまとめました。

年を取るとどうして頑固になるのかをまとめた動画はこちらです。