私たちはいつもよりよい自分を目指して、努力したり、工夫したりして生きています。

それは、こちらでおすすめしているタスク管理であったり、セミナーに行くことであったり、自己啓発書を読むことであったり。

私もセミナーに行ったり、自己啓発書を読んできましたし、今も読んでいます。残念ながら自己啓発書を読んで自分が劇的に変わったと思えたことはないのですが、もし究極の自己啓発書というものがあり、多くの人が幸せになった未来があったら、どんな世界になるのでしょうか?

そんな物語を書いたのが、『HAPPINESS TM』ウィル・ファーガソン/アーティストハウスです。

本書の内容

ダメ編集者、エドウィンのもとへチベットの山で悟りを開いたという男から原稿が届きます。

内容は全ての悩みから人々を解放し、必ず幸せになれるという究極の自己啓発書。やがて読んだ人々から「不幸」は消え「幸福」だけの世界となり消費社会は破滅への一途を辿り始め、エドウィンは出版を停止しようと試みます。

本書から気になった言葉を引用しながら、向上心を持ちつつもできない私たちという存在を肯定することも大切であることをご紹介したいと思います。

私たちの弱さが経済を支えている

この世界の経済は人間の弱さを基盤に築きあげられているんだよ

『HAPPINESS TM』203ページ

もっとよくなりたいという気持ちは自己啓発書や勉強、セミナーへ、もっと素敵になりたいという気持ちはお洋服や美容院、宝石へ、もっとかっこよくなりたいと思う気持ちは、ジムやエステサロンへなどなど・・・

「弱さ」は「欲求」ともいえるかもしれません、私たちのそんな弱さが経済を支えているので、当然、幸福になると、いろんな産業が消えていきます。

本書では、まずタバコ、アルコール、ドラッグ(舞台はアメリカ)業界がなくなります。それに伴い、更生施設もなくなります。更生が必要な人がいなくなるからですね。

その後はファッション、そして、主人公が勤めている出版業界も例外ではありません。

誰も見た目を気にしなくなり、ファッション業界も衰退、出版業界は『HAPPINESS』関連の書籍のみが売れ続けます。

不幸が消えると、喜びも消える

あとには個性を失って奇妙なまでに穏やかになった抜け殻だけが残されていた。

『HAPPINESS TM』214ページ

主人公エドウィンにとって、いけ好かない同僚はいろんな意味でのライバルでしたが、彼も『HAPINESS』を読んで変わります。

穏やかさと引き換えに個性を失ってしまいます。それを見て、さらに主人公は危機感を募らせていきます。

求める楽しさを楽しむ

そして完璧な自己を獲得したいというこの無謀な幻想こそが、けっして達成されないながらも何千年ものあいだ人類を活気づけてきたのだった

『HAPPINESS TM』215ページ

やろうと思ってもできない、永遠に来ない明日に期待を抱く多くの人たちの存在があるからこそ人類は活気づいていたと本書はいいます。

完璧な自己なんてありえないのですが、目指してがんばる姿勢というのは大事なことだと思っていますし、私自身もより成長したいといつも思っています。

この気持ちが経済も人類も活気づけてると思うとこれはこれでワクワクすることです。

ずっと幸福であり続けるということの幻想

喜びっていうのはひとつの状態じゃない。活動なんだよ。喜びは動詞であって、名詞ではない。ぼくらの行動から独立して存在するものじゃないんだ。本来、喜びはいつしか過ぎさるはかないものであって、永遠に続くべきものではない。

『HAPPINESS TM』283ページ

エドウィンのセリフです。

私たちは永遠に続く喜びや幸福を求めますが、それは幻想にしか過ぎないということにエドウィンが気が付き同僚に訴えるセリフです。

結局はバランス

人間らしくあるためには私たちの「やりたいのにできない」という状態や気持ちは実は大事なものなんですね。

もちろん、普段はタスク管理も自己啓発書も活用しつつ、理想の自分を目指して努力し続けることはとても大事なことですが、できない時は、深く、長くは落ち込まずに、こういう自分がいることが人類の発展に大事なのだと大局からみて、気持ちが落ち着いたらまた頑張って欲しいと思っています。

荒唐無稽な話かつ、ところどころに実名の会社名、あるいはそれを連想させる名前、上品でない表現、極端で面白い描写があり、読み物としても楽しめます。

幸福についてはこちらの記事でもご紹介しています。