『あなたの脳は変えられる』ジャドソン・ブルワー著/ダイヤモンド社

やめたいのにやめられないこと、ありますよね。ぼくはゲームを長時間プレイしたり、Youtubeの動画をついつい長時間観たりすることがあります。

今回は、マサチューセッツ大学医学部准教授、同大マインドフルネス・センターで、瞑想が脳に及ぼす影響を研究する著者による「やめられない」を克服する方法をお伝えします。

どうして、やめたいと思う良くないことにハマるのか?

世の中には魅力的な誘惑がたくさんあるとはいえ、まず、そもそもどうして私たちは、やめたいと思うようなことにハマるのかを確認します。

例えば、私たちが生きる上でもっとも大切な食糧を見つけると、脳がとても喜びます。特に糖を摂取できた時にはその経験と、糖を得た場所を強く学習し記憶として残します。

食べ物を見る(刺激)→食べる(行動)→美味しい(報酬)
刺激→行動→報酬をリピートします。このリピートがやめられない、を生み出します。

しばらくすると、私たちの創造力に満ちた脳はこんなことを言いはじめる。

「なあ、こいつは食べ物の場所を覚える以外にも使えるぞ。今度気分が冴えないときは、何かおいしいものを食べれば気が晴れるんじゃないか?」

『あなたの脳は変えられる』35ページ

私たちは、「いいことを教えてくれた!」と脳に感謝しながら試してみる。そして、腹が立ったときや悲しいときにアイスクリームやチョコレートを食べると、気分が実に明るくなるのを即座に学んでいく。これは、学習プロセスとしては、お腹が空いたときにものを食べたのと同じだ。違うのは刺激だけで、空腹信号の代わりに、悲しみなどの情動信号が食べる衝動の引き金になる。

『あなたの脳は変えられる』36ページ

ぼくたちの脳の仕組みが、刺激の多すぎる現代社会に合っていないんですかねえ。

食べるという、生存のための学習だったはずの脳のメカニズムが、食べ過ぎによる健康被害で命を縮めるメカニズムにすり替わってしまうという状況になっていますよね。

ストレスが溜まった時にちょっと食べ過ぎたり、飲み過ぎたりすることなんて、当たり前すぎて、言い訳すらしない時もありますよね。

食べることだけでなく、良くない習慣と思われていることのほとんどは、気が付くことすら難しくなっています。なぜなら、私たちの生活では、多くの時間を頭を使うことなく過ごしているからです。
そして、私たちの脳は、「快感そのもの」よりも「快感を予期させるもの」に反応するので、チョコレートをそう食べたくなくても快感の記憶がチョコレートに手を伸ばすことになります。

ストレスが良くない行動への引き金になる

食べることを例にあげましたが、いろんなやめたいことは、同じ反応を示します。最初の「刺激」は、「うまくいかない感」が日常にあり、それらのストレスが原因になる場合が多くあります。

私たちはストレスが昂じたときや、単に気分がすぐれないときに気分を楽にするためのさまざまな連合を学習するが、それは気分を楽にしたいと思わせている本質的な問題への解決策になっていない。問題の根を吟味せずに、過去の条件付けをもとに、「気分を直すにはもっとチョコレートを食べればいいんじゃないか」と考えて、主観的バイアスを強化しているだけだ。

『あなたの脳は変えられる』49ページ

チョコレートを食べると、しばらくの間は気分が良くても、その効果はだんだん弱まるので、もっとたくさん食べたり、回数を多く食べないといけなくなったり、チョコレートを食べても何の効果もなくなり、一時しのぎですらなくなってしまうときもあります。

それでも僕たちはチョコレートを食べることをやめようという発想すら浮かばないんですよね。

きっかけがないとなかなかそう思えないこともあるんですよね。

ここまでは、良くないことにハマってしまう原因をご紹介しました。ここから、解決策を一緒に探していきましょう。

やめられない!から抜け出す方法5つ

自分の現在の状況を立ち止まって確認する

道に迷った時に、地図で現在地を確認するように、自分の状況や気持ちを確認することが解決の第一歩になります。

同じように、物事をはっきりと見極めつつ、それに反応せずにいることで、自分が不ー快をどのように悪化させているか、また、どうすればもっと上手く取り組んでそこから離れられるかを学んでいけるだろう。

『あなたの脳は変えられる』53ページ

反応しないというのは、立ち止まるっていうことですよね。簡単そうだけど、難しいことですよね。

その通りなんです、私たちは何も考えずに日々過ごしていけるので、何かが起こった時に「反応しない」「立ち止まる」という、普段やっていないことをするという発想すら思い浮かばないことも多いのです。

私たちが当たり前だと思い込んでいることを見つめ直すところから始めて問題を探してみるといいだろう。少し立ち止まって主観的バイアスを見直し、苦悩を和らげるために続けてきた習慣を再検討してみれば、自分を苦しめ(さらに迷いを深め)ているものが何なのか、見えてくるかもしれない。

マインドフルネスは、迷っている者が道を見つけるための助けになる。

『あなたの脳は変えられる』50ページ

「物事を見極める」「反応しない」ようにしてみようと思っても、ではどうすればいいの?と思います。著者はマインドフルネスを行うことによってそれらの思考や行動ができる助けになると考えています。

問題解決の第一歩は問題を知ること

私たちは、自分が何からストレスを受けているのか、よくわからなくなっているのかもしれない。私たちは日々、「あなたは幸福ではない。けれどもこの車を買えば、この腕時計を買えば、すぐに幸せになれる」といった広告を浴び続けている。(中略)ストレスがたまったときに服の広告を見て(刺激)、ショッピングモールに行って服を買い(行動)、家に帰って鏡の前で着てみると気分が良くなったりする(報酬)このとき私たちはおそらく、繰り返しのトレーニングをしているのだ。

『あなたの脳は変えられる』114ページ

立ち止まることで、そもそも何からストレスを受けているのか、何が問題かを知るきっかけになります。

私たちは意識せずに、「やめない」ためのトレーニングを繰り返していることになります。

「やめたいのに(やってしまう)」という渇望する気持ちが、習慣を形成するとして、渇望(刺激)と喫煙(行動)のつながりについて著者はマインドフルネスのトレーニングを使った調査を行っています。

単純化したアナロジーで言うなら、タバコを吸いたいという渇望は、喫煙という燃料により燃え上がる炎のようなものである。吸うのをやめても渇望の炎は燃え続けるが、燃料が切れれば(そして注ぎ足されなければ)燃え尽きるだけである。私たちのデータは、この結論を直接支持する。(1)禁煙した人の活動が低下するのは喫煙の停止からしばらくあとになる。これは、残った「燃料」のせいでしばらく渇望が生じ続け、燃料が少なくなっていくにつれ、遅れて渇望も収まっていくことを示唆する。(2)喫煙を続ける人は渇望も続く。これは、継続的に燃料が補給されていることを示唆する。

『あなたの脳は変えられる』84ページ

刺激が起きても、行動を起こすための燃料を与えないことで欲求を抑えることができるようになります。
刺激→行動に移す燃料を不足させる→行動に移さない
刺激を避ける(喫煙している人に近寄らないなど)という方法もありますが、著者のマインドフルネスの調査では、渇望と行動のつながりを断ち切る、つまり問題そのものを知ることを目的としています。

「わかっちゃいるけどやめられない」は、分かっていない

「知っている」と「できる」の溝は深いものです。

ある女性患者は、喫煙が健康に悪いのは知識としては知っていた。だからこの講習プログラムに参加したわけだ。

この女性も、タバコを吸うまさにそのときに好奇心を持って注意を向けるようにしただけで、味がひどいことに気づいた。これは重大な発見だ。知識が知恵に変わり、頭ではわかっていた「喫煙は身体に悪い」という事実を体感したのだ。喫煙の呪縛は解けた。そのときから彼女は、縛られていた行動から本能的に抜け出しはじめた。無理な努力をする必要はなかった。

『あなたの脳は変えられる』76ページ

習慣的行動から本当のところ何を得ているのかーそれに目を向けることで、私たちはその何かを深いレベルで理解し、体得できる。それができればタバコに手を伸ばさないよう自分をコントロールしたり、無理に努力をしたりする必要はない。

この気づきの状態こそ、マインドフルネスの中心だ。

『あなたの脳は変えられる』77ページ

知識として「わかっている」けど、つい行動してしまうとき、何が自分に起こっているかをしっかりと見ることで、自分を縛っているものが何かが分かってくると「やめられる」可能性がでてきます。

「今ここ」に好奇心を持って意識することで状況が改善される

著者がすすめるマインドフルネスの特徴は、今ここを意識することです。

現代人の心の50%は今ここにないという調査結果も出ており、研究では、心が今ここにない時ほど幸せではないという結果も出ています。そして、やめたいこともやめにくい状況を作っています。

なるほどと思うのですが、今を意識する特別な方法などはあるのでしょうか?

はい、著者は「今ここ」を意識するための4つのステップを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

  1. 認識/リラックス:そこに起きていることを認識し、気を緩める
  2. 受け入れ/許し:それがそこにあることを受け入れる
  3. 検証:身体の感覚、感情、思考を検証する
  4. 言葉:そのときそのときに起きていることを簡単な言葉にする

これらのステップの最中は、好奇心や驚きなどを感じながら新鮮な気持ちを持つことで、集中して取り組むことがしやすくなります。

また、以下のように対象に集中することもおすすめです。

  • 心を対象に向ける
  • 心をその対象にとどめる
  • その対象に面白みを見出し、感じる
  • その対象に満足する
  • 心と対象を一体化する

最初は「こんなことをして効果があるのか」「時間の無駄」などと思われるかもしれません。私も最初は半信半疑でしたが、続けてみると、なるほど確かにと納得でき、今も継続しています。
無料で簡単にできるので、試してみることはおすすめしたいことです。

自制心を保つために、脳を休めよう

私たちの脳は、原始的かつ感情的なシステムと、脳が最後に進化した部分、論理的推論、セルフコントロールなどを行うシステムがあり、後者は最後に脳に加わった新参者です。どんな集団でも同じで、新参者の発言権は小さく、脳にストレスがかかったり燃料切れになった時に最初に犠牲になるのは後者の部分です。

私たちが意思を使って何かをやめるために必要な脳の部分を常に正しく働けるようにしておくには、睡眠や食事を十分に取るようにすることが大事で、ストレスを軽くしておくのも効果的です。

脳の中で意識的に行動を規制する能力が最も高い、前頭前皮質は、ストレスがかかると真っ先に機能を停止します。前頭前皮質の機能が止まると、私たちは喫煙や飲酒や薬物など慣れ親しんだ、おなじみの習慣的行動に逆戻りします。本当にそれは自動的に起きてしまうのです。

(前略)自分を変えるために抵抗しないトレーニング、あるいは抵抗に抵抗するトレーニングといったものを始めるときには、このジムのトレーニングと同じようなプロセス(何キロのバーベルを何回持ち上げるか、どのくらいの時間がんばるかを計算する)を日々の反応に適用してみるといい。まず、自分はどのくらいの頻度で、物事が自分に向けられたと思って反応するかを見るのだ。

『あなたの脳は変えられる』306ページ ()は補足のため入れています

あなたが歩み出そうとしているマインドフルネスのこの道が、あなたをあなた自身の心とあなたの本当の姿に近づけ、絶えずあなたをつかもうとする「何かを欲してやまない心」からの解放に向かわせることを願っている。 

『あなたの脳は変えられる』341ページ

あなたが良くないと思う状況に気づいてやり直す機会は常にあります。
お一人で頑張ってみても難しかった時は、タスク管理パートナーが毎日サポートします。毎日2回のメッセージと週1回の通話のあるベーシックサポートプランで、あなたのやめられないを変えていきましょう。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)講座のご紹介

このブログを読んで、マインドフルネスに興味が出てきたという方へ、縁があって、私が受講したマインドフルネスの講座、MBSR講座についてのご紹介をします。
たくさんの講座があって、何を選んだら良いか分からないという方にも参考になると嬉しいです。

講座の特徴や目的

MBSR講座は、1979年にアメリカのマサチューセッツ大学医学部の名誉教授ジョン・カバット・ジン博士とその同僚によって開発された、40年の歴史と科学的な実証が積み重ねられたプログラムです。

ストレスとうまく付き合っていくことを学ぶことで、人生をより豊かにしていくことを目的に作られました。

講座の時間や内容

講座の期間:8週間
毎週1回、2.5時間の講座
場所:オンライン
準備するもの:
・インターネット環境(インターネットに接続できるデバイス)
・ヨガマットのような、しっかりとした足場になる敷物
・瞑想クッション/座布団

週1回とはいえ、2.5時間はなかなか長い時間でしたが、オンラインだったので自宅で受講できることを考えると通学時間も含めると許容範囲でした。

講座のために特に何か購入はせず、敷物やクッションの代わりにキャンプマットを使いました。

講座とは別に、毎日の自宅での45分の瞑想の練習があり、かなり大変ですが、しっかりと取り組めば取り組むほど、豊かな学びを得られるものとなっています。

私は練習中に、意識が飛ぶことがたびたびありますが(笑)、他の受講生の方で、しっかりと取り組まれている方のお話を聴くと、その方の方がマインドフルネスを私より体得されていると感じたので、きちんと取り組めば取り組むほど良いのだと感じています。
講座終了後にマインドフルネスを学び続けるためにコミュニティができました。定期的に情報交換をしているのでこれからさらに学びを深めたいと考えています。

講座を受けるとどんないいことがあるの?

  • 集中力が向上する
  • 体調の変化に気づきやすくなる
  • イライラや恐れが減る
  • 周りへの温かい優しい心が養われる
  • 自分の悪習慣に気づいて少しずつ習慣を変えられるようになる

などの効果があると言われていますが、学びのプロセスには個人差がありますので、結果を焦らずに実践を続ける、というのもマインドフルネスの重要なポイントになります。

個人的には、こんなことが少しできるようになってきたかなと思っています。
・抑えていたネガティブな感情に気が付けるようになった
・イライラがさらに減った
・いろんなことを穏やかに受け止められるようになってきた

また、講座終了後は修了証がもらえます。講師を目指す方はもちろん、修了証があると達成感があって嬉しいです。

先生について

オンラインで30分ほど、講座の内容、不明な点や不安な事を聞くことができます。それから支払いの流れになるので、迷った時には無料相談を受けてみてください。

たくさんのMBSR講座がありますが、私が受講した先生はとてもおすすめできる先生です。先生が作られたアプリを使用できるので、日々の宿題に復習にとても便利に使っています。

吉田篤史先生
・精神科医、日本医師会認定産業医、公認心理師
・マインドフルネスでは、Ted Meissner氏に師事。「精神科治療学」2023年1月号寄稿(下記雑誌リンク参照)
・エンジニアとして、大学でソーシャルロボットセラピー、メンタルヘルスウェアラブルデバイス、VR開発などの研究開発を行っている

事前無料セッションは講座開講が決まりましたらこちらでもお知らせします。

*本講座のお申し込み情報を先生へお渡しすることを予めご了承ください。お申し込み後は吉田先生より直接ご連絡があります。