『フィンランドで見つけた学びのデザイン』大橋香奈+大橋裕太郎著/フィルムアート社
『独学大全』を読んで学びたいと思った方に特にご紹介したい本です。
学びの体験を求めてフィンランドに行った著者たち。様々な場所で見つけた学びの体験を紹介した本書から、いろんな場所で学びは得られることをご紹介します。
社会人になってから学ぶことの重要性に気が付いた方も多いのではないでしょうか?今回はいつものすぐに仕事に活用できる学びではありませんが、人生を豊かにする学びについてご紹介します。
雑談などにもいいかも!
「豊かな人生」のために必要なことを挙げればきりがありませんが、私たちが特に重要だと思うのは、「楽しさ」と多様な「学びの体験」です、(中略)
それは、「学び」という概念の持つ自発性や柔軟性に「豊かさ」の源泉があると感じたからです。「学び」と並んで使われる言葉に、「教育」があります。読んで字の如く「教えて育てること」、教える側を主体とした言葉です。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』17~19ページ
フィンランドの公の施設では様々な学びが子供から大人にまで提供されています。
フィンランドの元教育大臣が学びの理念として選んだ言葉
「学校のためではなく人生のために学ぶ」
この言葉を読んで著者たちは、フィンランドには人生を豊かにするための柔軟で開かれた学びの実践があるのではないかと考えそれを探しに行くことを決めました。
「仕事のためではなく人生のために学ぶ」とも言えそうですね。
目次
学びのデザインとは、学びを作ること
現場に立つ人は、まるでお客さんの体に合わせて服を作る仕立て屋のように、集まる人々のことを慮り、対話を繰り返しながら、「学び」の空間や仕掛けを作り出していました。
その仕事は「デザイン」と言い換えられるように思います。
「学びのデザイン」に完成形はありません。不具合や新しい課題が見つかれば改善を重ねていく。デザインをする人自身も学びながら進化していく、終わりのない仕事です。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』22ページ
フィンランドの主に公共の施設では、多くの学びが提供されています。それらの場所には、その学びを提供するスタッフが日々試行錯誤しながら学びを作っています。その様子がまるで学びの設計図を作ったり、構想を考えるという様々な「デザイン」のようであると著者は書いています。
学びには完成も終わりもない。だからずっと学ぶことを楽しむことができるのですね。
ここからは、フィンランドの公共施設と学びについてご紹介しながら、学びのデザインの一端を知りたいと思います。
フィンランドの公共施設と学び
フィンランドでは、様々な公共施設で様々な年代に向けた学びが提供されています。
広く一般市民を対象にした教育活動が登場したのは1970年代のことです。(中略)これにより、ミュージアムは「教わる」場から「学ぶ」場へと移行しました。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』27ページ
もともと、学びの場があったのではなく、今のような学ぶ場への変化があり、約50年の工夫や改善が今のフィンランドのミュージアムをはじめ、様々な学びの場を作っています。
教育と同じように学びにも、変化する時間が必要なのですね。
ここからはそれぞれの施設についてもう少し学んでみます。
ミュージアムと学び
美術館や博物館、あんまり行かないなあ
美術館も博物館もものすごく楽しい空間です。最近では講演会やワークショップなども行われているので、それらのイベントに参加するのもおすすめです。
フィンランドのミュージアムにおける学びを支援する活動理念が次の3つです。
・来館者の個人的体験を支援し、個人の解釈と想像力を活性化する
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』28ページ
・来館者の理解を深め、気づきを高めるための情報を提供する
・ミュージアムを社会的教育的な公共施設として開放する
体験はすべての年齢で行われ、中には幼児向けのものもあります。「幼児がミュージアムガイドになる」という企画では最年少は3歳児も参加し、大人がガイドを目指す場合と同じように、16回に及ぶ研修を受講しました。
大人が勝手にできないと決めつけるのではなく、年齢に関係なく学ぶ意欲や好奇心を大切にしているのですね。
身の回りのあらゆる物は、何らかの意図を持ってデザインされています。デザインへの不満はすぐに思いつくかもしれませんが、なぜそのようにデザインされたのか考えたことはありますか?デザインについて、ただ不満を語るのではなく、じっくりと見つめなおし、成り立ちを知り、深く考えて議論すれば、新たなデザインの検討につながります。誰でもデザインに参加することは可能です。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』50ページ
不満を言って終わりではなく、「なぜ」を考えることが学びの始まりなのかもしれません。
不満を学びに変えることを学ぶことで問題解決の力につながり、どうすれば良くなるかを考える力が育ちそうです。
公園を子供たちの視点で変えるというプロジェクトもあります。
このプロジェクトで子どもたちは、デザインの力を使って自分の住んでいる地域社会の課題を解決することを学びます。自分たちがよいと思うデザインは、環境にどう影響を与えるのか。地域住民にとってその変化を嬉しいことなのか。専門家とディスカッションを繰り返します。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』55ページ
不満や愚痴を言うだけではなく、ではどうするかを考えて子どもたちと解決しようという取り組みです。
自分たちだけが良いと思う物を作るのではなく、環境、住民のことも考慮し、専門家と議論できる経験は将来にも役立ちそうです。
こちらは、フィンランド科学センターの理念です。
・科学、革新、本質にこだわる
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』58~59ページ
・全ての人に発見する喜びをもたらす
・刺激的な学びの体験を提供する
来館者を見ていて気づくことは、子どもも大人も、展示物と夢中で「遊んでいる」ことです。ただ「眺めている」のではありません。すべての人に発見する喜びを、という理念が実現されていることは、来館者の表情を見ていると理解できます。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』60ページ
「静かにしなさい」「触っちゃダメ」たくさんの決まりがもしかすると学ぶ楽しさを奪っていることもあるのかもしれません。
すごく楽しそうです!静かにしなきゃという記憶しかなく何となくつまらないイメージがありましたが、まずは日本のミュージアムに今度行ってみようかな。
サトウさん、ぜひおすすめです。
ミュージアムでの出会いは、知識を持っていくと面白さは増えますが、知識がない状態で触れる楽しさもあります。何度も行けるようでしたら、まずは展示物そのものを楽しみ、学習してからもう一度行くというのもおすすめです。
次はフィンランドの図書館と学びのご紹介です。
図書館と学び
フィンランドは、図書館の利用率が世界で最も高い国のひとつです。フィンランド教育文化省の発表によると、国民の約80%は図書館を利用しており、平均で1人あたり年に11回訪問、19回の貸し出し記録があります。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』68ページ
日本の公共図書館利用回数は、国民1人あたりにすると年に1.3回だそうです。いつも利用する人と全くしない人の差がかなり大きそうです。
図書館って学生の時に勉強するために利用していたぐらいかな。本は購入するから図書館に行くこともほとんどないなあ。
日本の図書館もサトウさんが学生の頃とはずいぶん変わっていると思いますよ。
また、なかなか本屋さんでみつからない出版年の古い本、絶版になった本、発行部数の多くない学術書などは図書館だからこそ読めるというのもあります。
サンポラ図書館が掲げる目標は、「単に本を貸し出す場所ではなく、年齢、性別、国籍、経済状況に関わらず、すべての市民が毎日通いたくなる場所になること。心地よい空間で、多様な学びの機会を提供することです。」(中略)
「リタイアした人たちは学びたいと思っても学ぶ機会が少ない。そんな人たちにも積極的に図書館を使ってほしい。すべての人に学びの機会を提供するのが、私たちの役割です。」
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』73~75ページ
娯楽のための読書だけでなく、学びのためのきっかけや、学びのための読書についてももっと図書館が活用できるといいですね。
日本にも「図書館の自由に関する宣言」がありますね。ただ、本を無料で貸し出す場所、勉強する場所という認知になっているのが残念なことです。
映画鑑賞も学びのきっかけになります。
映画鑑賞と学び
映画って娯楽じゃないんですか?
もちろん楽しみのためというのもありますが、登場人物の心の動き、外国の映画であれば文化や考え方の違い、ドキュメンタリー映画で知らないことを知るなど、映画からも多くの学びを得られます。
年齢に合った適切な映画をクラス全員で鑑賞し、議論する場を作れば、子どもたちはたくさんの「発見と学び」を分かち合うことができます。映画は、自分の感情を見つめなおす機会と経験を与えてくれます。また、自分を取り巻く世界について学ぶための題材にあふれています。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』 119ページ
映画は娯楽の側面ももちろんありますが、多くの学びもあります。子どものころより議論するという環境があり、いろんな意見を分かち合えるのは素晴らしいことです。
議論はなかなか難しくても、映画からもたくさんの発見と学びを得ることができます。
ドキュメンタリー映画で新たな発見をしたり、原作の小説と比べて表現方法を比較したり、音楽、衣装、化粧、演技など、映像ならではの楽しみ方や学びもたくさんあります。
自然からもたくさんの学びがあります。
自然と学び
そもそも自然のある所になかなか行かないですねえ。
私もなかなか。公園に行くぐらいですが、自然からはたくさん学ぶことがありそうです。
幼い頃から、「環境」「幸福な生活」「持続可能な未来」に対する責任について考えることが目的であり、これは高学年で、生物、地理、物理、化学などを学ぶ際の重要な基盤になると考えられています。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』 142ページ
子供の頃に、基本となる考え方を実践を通して学ぶ機会があると、それらが体験として学習に活用できそうです。
山歩きの際に見つけた綺麗な鳥の名前を知りたいと事典を調べるのは学習の第一歩ですね。
子どもは分からない、ではなく一人の人間として接しているように感じられます。私も子供たちに混ざって授業を受けてみたい笑
動物園ではどんなことを学ぶのでしょうか?
動物園と学び
動物園も子供の頃に行ったきりです。
旭山動物園の事例をきっかけに各地の動物園が変わってきています。動物園は大人も行っていい場所ですので、行ってみると、昔のイメージが払拭されるかもしれません。
動物園に来た子どもたちが、動物を眺めるだけでなく、動物の生態について学び、さらに学んだことを表現する機会を提供しています。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』 156ページ
「動物可愛い~」で終わらず学びの場所とし、さらに学んだことを発表する場があるという仕組みが学びのデザインの一つです。
アウトプットをしないと、いい加減にしか見ず、すぐに忘れてしまうのでアウトプットは自分のために大切なことです。
現在はブログやTwitterなどで気軽に発信できるので、まずはこういう場を利用して学んだことを発信するのも良いですね。
人生がより豊かになる、フィンランドの生涯学習
学習は子供だけのものではありません。生涯かけて、いろんなことを学ぶことができます。
フィンランド成人教育センターをのぞくと、そこには大人のための多様な「学び」の機会が用意されています。(中略)
(前略)フィンランドでは「働く人のため」と限定せず、「すべての成人のため」の教育センターとして発展、普及させたことでした。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』196~197ぺージ
学校を卒業したらそれで勉強は終わりではなく、その時々で仕事に必要な勉強、興味のある勉強を続けていくことで人生がより豊かになります。
フィンランドでは、人生の様々な状況において必要な学びを得られる仕組みがたくさんあります。
学ぶことは本来とても楽しいことです。学校教育が原因で学習はさせられるものだと思ってしまっている人が多いことが非常に残念です。
仕事にも人生にも大切な、学びもご一緒に
「生きる」ことは「学ぶ」こと。それは、豊かな人生、そして豊かな社会を実現するために、人は学び続けるということ。学びの場を提供する人も、そこに参加する学び手も、実践しながらともに学び続けることが大事だという「学び合い」の精神。柔軟で開かれた「学び」をデザインするべく現場で奮闘する人々から教わったことです。
『フィンランドで見つけた学びのデザイン』205ページ
正解も間違いもなく、重視するのは議論と学びのプロセスという考えがあると、様々なアイデアが出てきやすいですね。
学びも学んだら明日から役立つ学びと、役に立つかどうかもわからない学びとどちらも行うことがバランスが良いと考えています。
こういったすぐに役に立たない学びは、お仕事の結果にすぐに結びつくわけではありません。それでも学ぶ価値があると考えています。なぜなら、学び続けることでお仕事も、人生もさらに豊かなものになるからです。
フィンランドの学びのシステムはとても素晴らしいものです。もちろん、日本にいても学びの体験を作ることも可能だと考えています。大事なのは、誰かがが準備した教育を待つのでなく、自ら学ぶ姿勢なのかもしれません
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パートナーは仕事以外の学びとして、興味のある
分野の読書、資格試験を受験したり、語学の勉強を行っています。
ぼくも仕事以外のことも学びたくなってきました。まずは、自分の興味のあることを思い出してみることにします!
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