先延ばしは性格のせいじゃない:記憶の仕組みから読み解く科学的解決法

公開日 2026/3/24

やろうと思っていたけど、ついつい後回し、気が付いたら忘れていたということはよくあることです。それは脳が『思い出すタイミング』を逃していたり、脳の『ワーキングメモリの制御不足』なのかもしれません。

この「忘れるから、先延ばしをする」サイクルの原因と解決方法を論文をもとにご紹介します。

忘れた結果、先延ばしをするなんて何度も繰り返しました
絶対忘れないだろうと思っていたけど、忘れるんですよね・・・

先延ばしの原因は人によって違いますが、ご紹介する方法であなたの先延ばしが克服できるといいなと思っています

先延ばしが起きる理由

まずは、今までにブログでご紹介した先延ばしの理由をピックアップします

・先延ばしを正当化してしまう、認めたくない
・計画性の乏しさ
・どうせ失敗すると決めつける
・課題が退屈
・目の前の誘惑に勝てない
・遺伝的要因
これらの先延ばしの理由はこちらのブログからです
先延ばしをやめたい人必見:先延ばしの原因を知り、今日からできる克服法を解説<原因編>

完璧主義を目指すと先延ばししやすくなりますし、似たようで違うのが自分に厳しいために結果、先延ばしになってしまうこともありますよね

いろんな理由がありますが、感情的な理由もよく言われています
感情的な理由が原因かなと思ったあなたは、こちらのあなたの「先延ばしタイプ」診断を受けてみてください

先延ばしに関するブログもまとめてみました

今回のブログは、記憶の領域から先延ばしにアプローチする論文を紹介します
特に完璧を目指しているわけでも、タスクが嫌なわけでもなく、忘れていた(思い出せない)ことが理由で先延ばしになったり、実行できていない方向けの原因と解決方法です

展望記憶について

論文を紹介する前に、展望記憶という記憶についてまずは説明します

展望記憶(Prospective memory ; PM)には、「3時になったら、お茶にしよう」「10時になったらマシンでの筋トレをしよう」というように、時間を基盤とする展望記憶「時間基盤型展望記憶」(Time Based Prospective memory;TBPM)と、「掃除が終わったら、お茶にしよう」「筋トレが終わったら、クラフトの続きを再開しよう」など出来事を基盤とする展望記憶「事象基盤型展望記憶」(Event Based Prospective memory;EBPM)があり、両者の展望記憶を賦活することが必要です。

展望記憶は、「将来する予定を覚える」「その内容を覚え続ける」「思い出す」「予定を実行する」という過程からなります。

日本通所ケア研究会 参照2026年3月12日

整理して書いてみるとこうなります

展望記憶は以下の過程からなります。

  • ①将来する予定を覚える
  • ②その内容を覚え続ける
  • ③思い出す
  • ④予定を実行する

この過程のどこが苦手かで対策方法も変わります
また、展望記憶には2種類あります

時間基盤型展望記憶:時間を基盤とする展望記憶
「3時になったら、お茶にしよう」「10時になったらマシンでの筋トレをしよう」

事象基盤型展望記憶:出来事を基盤とする展望記憶
「掃除が終わったら、お茶にしよう」「筋トレが終わったら、クラフトの続きを再開しよう」

事象基盤型展望記憶はif-thenの行動ですね
でも、時間を基盤とする展望記憶の方がよく使いますよね
9時から仕事を開始しようとか

if-thenについては、後ほどご説明します
サトウさんの仰るように、時間ベースの記憶が一般的だと思います
この展望記録の過程と2種類の記憶がこのブログの肝になります
ここから、この展望記録に関する論文を紹介します

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2種類の「未来の予定を思い出す力」がある

アインシュタインとマクダニエルによる1990年の論文「Normal Aging and Prospective Memory」1は、「高齢者は記憶力が一律に低下する」という常識を覆し、記憶の種類によっては若者と遜色ないパフォーマンスを発揮できることを証明しました。

この研究以前は、「加齢とともに記憶は衰える」と考えられていました。

ぼくは、記憶は加齢によって衰えると思っていますが、違うんですね!

年齢を重ねていくことを考えると、嬉しい研究ですよね!
展望記憶の過程
①将来する予定を覚える
②その内容を覚え続ける
③思い出す
④予定を実行する

①もしくは②の過程を難しく感じる方はこの論文内容がしっくりくると思います

実験内容

この論文では「未来の予定を思い出す力(展望記憶)」に着目し、以下の2つのタイプを実験で比較しました。

  • 時間ベース (Time-based) のタスク:
    「5分おきにボタンを押す」「15時に薬を飲む」など、時間の経過を自分で監視するタスク
  • イベントベース (Event-based) のタスク:
    「特定の環境刺激(イベント)が、記憶を自動的に呼び起こすトリガーになる」仕組み
    「特定の単語が画面に出たらボタンを押す」「家のドアを見たらポストをチェック」など、外部の刺激(きっかけ)によって思い出すタスク

実験の結果

  • 時間ベースのタスク: 高齢者は若年層に比べて明らかに成績が低い
  • イベントベースのタスク: 高齢者と若年層の間で成績にほとんど差が見られなかった

時間ベースのタスクは、自力で時間を気にし続ける必要があるため、脳の「実行機能」に大きな負荷がかかり、若者の方が有利という結果になります

これは驚きの結果で、将来に希望が持てました!
確かにタスクを覚えておかないといけないって大変なことなんですよね
けど、この結果って要は高齢者に向けたものではないんですか?

イベントベースのタスク作成が、どう先延ばしに役立つかは後ほど説明します
次は別の研究をご覧ください

思い出せるけど、他のことをしてしまう

コリン・ワステル氏の2014年の論文「Procrastination and prospective memory2は、「先延ばし」と「うっかり忘れ(展望記憶の失敗)」の間の関係を解き明かした研究です。

先延ばしの原因はワーキングメモリの制御の問題

この論文の核心は、「先延ばしをする人は、記憶力そのものが低いわけではない」という点にあります。

多くの先延ばし魔は「うっかり忘れていた」と言い訳をしますが、実験の結果、彼らの脳は「予定を思い出すこと」自体には成功していることが多いと分かりました。

問題は、「思い出した瞬間に、別のことに気を取られて実行を阻害される」ことにありました。

この状況だと、確かに「忘れていた」と言いそうです

記憶そのものの問題ではなかったのが分かると、効果的な対策ができますね
こちらは、展望記憶の過程
①将来する予定を覚える
②その内容を覚え続ける
③思い出す
④予定を実行する

④の実行が難しく感じられる方にぴったりの内容で
ワーキングメモリ(作業記憶)の制御不足が問題だとされます

ワーキングメモリの制御不足とは?

ワーキングメモリとは、情報を脳内に一時的に保持し、同時に処理するための「脳の作業机」のような機能です。ワステル氏の論文では、先延ばしと「机の管理能力」の関連を以下のように分析しています。

「思い出した瞬間」の割り込みに弱い

先延ばし傾向のある人が「あ、レポート書かなきゃ」と思い出した(展望記憶③思い出す)とします。
しかし、その瞬間にスマホの通知が鳴ったり、別の楽しそうな考えが浮かんだりすると、ワーキングメモリの制御機能が低いために「レポートを書く」という意図を机から払い落としてしまうのです(展望記憶④の実行ができない)。

これは心当たりがありすぎます!ぼくの先延ばしの原因はここにあったんですね!

理由が分かると嬉しいし、対策できますね
もう少し続きます

「割り込みに弱い」人は、抑制制御の弱い人

ワーキングメモリには、「今は関係ない刺激を無視する(抑制制御)」という重要な役割があります。

  • 制御が強い人: 「レポートを思い出した。今はスマホを無視してパソコンを開こう」と衝動を抑えられる
  • 制御が弱い人(先延ばし派): 「レポートを思い出した。でもこのLINEだけ返してからにしよう」と、新しい刺激に机を乗っ取られてしまう

ぼくは完全に制御が弱いタイプですね・・・

後ほど解決策もお伝えしますね
さらに、ワーキングメモリを占拠してしまう感情の問題もあります

ネガティブな感情がメモリを占拠して、先延ばしをしてしまう

さらに、「タスクへの不安や嫌悪感」そのものがワーキングメモリを占拠してしまうこともあります。
「嫌だな」という感情が机いっぱいに広がっているため「やるべきこと」が机の上に乗るスペースがなくなってしまうのです。

嫌だなという気持ちはできるだけ持たない方がいろんな意味でいいんだろうというのは分かりますが・・・

嫌な気持ちを軽減するためにセルフコンパッションなどを利用するのもおすすめですが、まずは、自分がそのタスクにどんな感情を持っているかを確認するのがおすすめです

どうすれば忘れることによる先延ばしを防げるか

ここから、解決方法をお伝えします
ご自身の忘れる傾向が把握できた方はその解決方法を中心に役立ててください
まずは、そもそもタスクが思い出しにくい方向け(展望記録①②あたりで困っている)の方法です

「イベントベース」のタスク管理を使う

イベントベースのタスクとは、「特定の環境刺激(イベント)が、記憶を自動的に呼び起こすトリガーになる」仕組みのことです。

この方法が加齢だけでなく、先延ばし対策に有効である理由は以下の2つです

イベントベースのタスク管理は、脳への負荷が低い

時間ベースのタスク「あと30分したらメールを返そう」と考えるとき、脳は「今は何分?」「まだ?」と常にリソースを割き続ける必要があります。
一方で、イベントベースのタスク「パソコンの電源を入れたら、メールを返す」と決めた場合、パソコンという外部の視覚情報がトリガーとなり、脳はそれまでその予定を完全に忘れていても、その瞬間に「あ、メールだ」と思い出すことができます。

  • 時間ベース(難易度高め): 「夕方、牛乳を買うのを忘れないようにしよう」
  • イベントベース(難易度低め): 「仕事用のカバンの持ち手に、買い物袋をぶら下げておく」
    →「カバンを持つ」というイベントが、「牛乳を買う」という記憶を強制的に引き出します。

これは今までに紹介したif-thenプランニングの方法です
脳への負荷を低くすることによって、思い出すことができ、実行しやすくなります
if-thenプランニングについては、先延ばしを減らす行動の始め方のブログも参考にしてください

if-thenプランニングも役に立っているから、忘れることもやっぱりありますね・・・

「自分の記憶力を信じず、環境にリマインドを埋め込む」ことが最も科学的な戦略で、先延ばしを防ぐイベントベースの「きっかけ」作りを行うことで先延ばしを防ぎやすくなります

「忘れる(思い出せない)ことは、能力の欠如ではなく、思い出すための戦略のミス」と聞いて希望が持てました

「つい忘れて先延ばしにしてしまう」と感じる場合
「時間を意識せずに、勝手に目に飛び込んでくるイベント」を設計することが先延ばしの防止方法になります

脳の机(ワーキングメモリ)を空ける方法

ここからは、予定が実行しにくい、割り込みや制御に弱い方向け(展望記録④で困っている)の方法です

ワステル氏の研究から導き出される対策は、単に「覚えようとする」ことではなく、「ワーキングメモリへの負荷を最小限にする」ことです。

脳の作業机の上をできるだけ片づけておく方法を取り入れると良いということですね

「先延ばし=性格」ではなく、「脳の作業机(ワーキングメモリ)が、一時的に別の感情や刺激にジャックされている状態」だと分かると、今日から対策が実行できます

「自分は忘れっぽい」と仮定する
自分の記憶を過信せず「忘れっぽい」と自覚して対策を講じている人の方が、結果的に実行率が高いという傾向も示唆されています。

過信してしまって忘れるより、忘れるかもと予測してタスクにしておくことで、できることは格段に増えました!

サトウさん良いですね!
仰るようにタスク管理は「忘れていた(思い出せない)」ことに対しての最高の対策です

先延ばしを避ける具体的な方法の5つ

ここからは具体的な先延ばし対策法を論文とタスク管理パートナーの経験をもとにご紹介します

1: if-then プランニングの活用

先ほども紹介したif-thenプランニングは、そもそもタスクが思い出しにくい方向け(展望記録①②あたりで困っている)の方法です

「もし〜したら(イベント)、〜する(行動)」の固定化:
心理学では「実装意図(If-Thenプランニング)」と呼びます。
例:「コーヒーを淹れたら(イベント)、一番嫌なタスクに5分だけ着手する(行動)」

さらに、物理的な方法も有効です

物理的な「障害物」をトリガーにする:
例:提出すべき書類を、必ず踏まなければならない玄関マットの上に置いておく。

ぼくは、忘れたくない物を入れた袋を玄関のドアノブに引っ掛けたりしています

私は書くべき書類などをキーボードの上に置いたりしています
また、郵便物を出す時は、カバンの中ではなく手に持つ+「ポスト、ポスト」と言いながら歩くようにしています

どうして、手に持ったうえで、「ポスト」とまで言うんですか?

手に持っていても忘れるからなんですよね笑
失敗しながら忘れない方法をいつも模索しています

2: 紙やアプリにやることをすべて書く

これは、展望記録のどの部分で困っていてもおすすめできます

外部化による負荷軽減

「イベントベース」の実践方法の一つとして、メモや付箋、スマホのリマインダーが万能です。
また、脳の机(ワーキングメモリ)の上に「予定」を置いておかず、すべて紙やアプリに書き出すことで、脳の机の上はスッキリと片付きます。

いろんな人がいろんなところで書くことの有効性を繰り返し言っていますが、それだけ簡単なのに効果的なのでぜひ、書き出すことを行いましょう

絶対にやりたい!と思うことであっても忘れてしまうことはよくあるから、書き出したいし、簡単なことなのに、なかなかできないんですよね

そうなんですよね
コツの一つは、思い出した時にすぐに書き留めるようにしておくことです
これが習慣になるまでなかなか難しいのですが、タスク管理パートナーはそんなお困りごとをサポート、習慣にするお手伝いをしています

3: 「後で」をなくし、小さな一歩を必ず行う

これは、予定が実行しにくい、割り込みや制御に弱い方向け(展望記録④で困っている)の方法です

「思い出した瞬間」の即時行動をルール化:
「思い出したけれど、後でやる」という判断は、ワーキングメモリに情報を留め続ける負担を強います。
これを避けるため、「思い出した瞬間に、その作業の『最初の一歩』だけは絶対にやる(PCを開く、メールを1行だけ書くなど)」というルールを徹底します。

始めはすぐにできるもの、簡単なもの、行動しやすいものから始めてみましょう
「すぐやる」ことを習慣にしていくと、「後で」は減っていきます

4: 自分の記憶力を過信せず先延ばし防止の行動を行う

「自分は忘れっぽい」と仮定する
先ほども紹介しましたが、大事なことなのでもう一度ご紹介します。
自分の記憶を過信せず「忘れっぽい」と自覚して対策を講じている人の方が、結果的に実行率が高いという傾向も示唆されています。

自分の記憶には自信があったんですが、そうではなかったんだと改めて気が付けたことが一番の収穫なのかもしれません
すごく残念だったけど、そこから対策すると、先延ばしも減りました

いろんな対策の方法がありますが、自分が覚えてないかもしれないからという意識がないと対策ができないので、まずは現状を確認すること
そして、とても記憶力が良くても、外部の記憶媒体に頼る方が他のことを考えるための空きが脳の机にできるのでおすすめです

記憶が大事な場面もありますが、今は創造力やアイデア、その人個人しかできない仕事により重きがおかれているので、記憶する容量分を空けて、考えるスペースを作る方がいろんなところに貢献できそうです

時代や状況によって変わりますが、そういう傾向にはあるので、より便利で役立つ方法を選択できるといいなと思っています

5: 先延ばしは改善できると信じて取り組む

どうせやっても無理だと決めつけると行動できないので、変わることはありません。紹介した方法は今日からできることばかりです。

このブログを読んだら、やることを1つ決めてお気軽に試してみてください

どの方法が1番おすすめですか?

これはお困りごとによって違うので一概には言えませんが、個人的には、自分の記憶力を過信することをやめたことで書く習慣ができたので、記憶力の過信をやめることが一番のおすすめです
タスク管理パートナーのサービスでは、ご一緒にあなたに合う方法を選んで試していきます

ぼくは、タスク管理パートナーさんにサポートしてもらってから、タスクを書き出すようになって、意外に忘れていることに気が付けました
自分に合う方法が見つかるまで探し続けられて改善できたので、本当によく仕事が進んでいます

サトウさん、良かったです
お仕事はもちろん、プライベートで先延ばしをしていることもできるようにサポートをしています
先延ばしの対策方法を見つけたい方は、ベーシックサポートプランを、重度の先延ばしですべてが混乱している方は、フルサポートプランがおすすめです

参考文献

  1. Einstein, G. O., & McDaniel, M. A. (1990). Normal aging and prospective memory.
    Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. ↩︎
  2. Wastell, C. A. (2014). Procrastination and prospective memory.
    Personality and Individual Differences., Volume 60, April 2014, Pages 45-48. ↩︎

著者

ふくおか なみこ

ふくおか なみこ

タスク管理パートナー代表パートナー。 さまざまな業種、立場のお客さまの行動管理、習慣定着のお手伝いをしています。 司書として複数の図書館に勤務。改善に取り組んだ経験を元に、大阪梅田に私設図書館(コワーキングスペース)をオープンし、多くのビジネスマンに快適なスペースの提供、ビジネスのサポートをしてきました。 大学や図書館関係での講演経験あり。 出版、小物販売、着付け教室などの小規模ビジネス起業経験も。 仕事、勉強のはかどる仕組み作りとモチベーションアップを応援しています。

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