『ヤル気の科学』イアン・エアーズ著/文藝春秋

新しいインセンティブ構造を使えば、禁煙したりダイエットしたり従業員を管理したりもできる。それを知ることで、仕事でも私生活でもインセンティブを工夫して、望む結果を実現できるようになっていただければ幸いだ。

『ヤル気の科学』 7ページ

行動経済学の考えを基に、目標を達成する方法を本書から教えてもらいます。

インセンティブとコミットメントという言葉について説明します。

インセンティブとは、人々の意思決定や行動を変化させるような要因、動機付けや報酬のこと。

コミットメントとは、口約束ではなく、責任をもってある事象や物事に関わっていくことを公約・明言すること、責任を伴う約束をすることを指す言葉です。

新しいインセンティブ構造とは、インセンティブとコミットメントを状況や性格などに合わせて組み合わせて使っていくことです。
つまり、あなたにぴったりの方法を探すことを指します。

ぼくにぴったりの目標達成の方法を探す旅ですね!

インセンティブは行動に「値づけ」して「選択肢のどれかに誘導する」もの。
コミットメントは「考えられる選択肢を選択からなくしてしまう」もの。
すなわち、将来のよろしくない行動に「選択制約」をかける。

『ヤル気の科学』82ページ

例えば、インセンティブは、煙草を吸ったら1万の罰金、ダイエットに成功したら1kg/1万円のご褒美などの値付けをすること。
コミットメントは、スマホのゲームがやめられない場合は、アンインストールする、飲酒を不快にする薬で禁酒をするなどで、選択に程度の差はあれ制約をかけることです。

伝統的なインセンティブとコミットメントの違いは、「抑止性」にある。(中略)
コミットメントは、将来の選択肢を不可能にする、あるいは大がかりにして無視できないものにする。文脈や人に応じて多種多様なコミットメントが考えられる。

『ヤル気の科学』83ページ

コミットメントの一つの方法は拒否できないような提案をすることです。

同じく罰金という罰を選択しても、タバコを1本吸ったら50万円というような大がかりなことにしたり、より多くの人に公言して後に引けないような状況を作ります。

ここからは、私たちが目標を達成できない理由と、コミットメントを成功させるコツを3つご紹介します。

私たちはなぜ目標達成できないのか?

ぼくも以前はできなかったから、気持ちはよく分かるなあ。

何度も繰り返せば、自分が将来やり抜くだけの意思力がないことくらい分かりそうなものだ、と思うかもしれない。だって毎年ほとんどの人は新年の誓いをたてるが、ほとんどの人はそれは守り通せないのだから。でも人間は、過去の証拠を無視して、今度こそ大丈夫と自分を納得させる能力が驚くほど高い。

『ヤル気の科学』37ページ

わわわ・・・「今度こそ大丈夫」って考えもなく、行動もせずに思ってたなあ。

多くの人が経験があることですよね。
これは、「短期的な誘惑に弱い」という私たちの生まれ持った特徴が関係しています。
この特徴を意思の力だけでなく、コミットメントによって抑えて、目標を達成するヒントをご紹介します。

  • コミットメント契約は、多くの人がもっと幸せな暮らしを送るきっかけになる
  • コミットメント契約は、各種の行動問題について簡単で強力な解決策をもたらす
  • コミットメント契約は、破った場合の罰や達成した場合のご褒美を持つ約束

行動経済学はコミットメント契約が本当に効くことを示しています。

でも、行動経済学という学問で効くというのは机上の空論じゃないですか?

仰るように、サトウさんに効く方法を見つけないと意味がないですよね。
あなたにとって一番効くコミットメントを構築するにはどうすればいいいのでしょうか。

自分を知ることが最初の一歩

まず最初に知って欲しいのが、あなた自身のことです。

「すぐほしい」自分と「将来まで我慢できる」自分との、内なる争いを知ること

人生の少なくとも一部の側面で、多くの人は「今」に中毒している。われわれは目先の満足にとらわれている。

『ヤル気の科学』24ページ

行動経済学の用語で双曲割引という言葉があります。これは、遠い将来なら待てるけど、近い将来は待てないという私たちの非合理的な行動を表す言葉です。

双曲割引を持つ人の特徴

  • 報酬を即座に受け取ることに多大な価値を置く、つまり今すぐでなければいらない
  • 目先の面倒を少しでも先送りすることに価値を置く、問題が大きくなっても先送りを選ぶ
  • 報酬や面倒がずっと後になると、あまり気にしなくなる

なんだか踏んだり蹴ったりな言われような・・・でも以前のぼくはこういう部分が多かったかなあ・・・

今のサトウさんは違いますよね!
私たちはこんな今の誘惑や不合理な行動をサトウさんのように克服することもできます。

私たちは、決定を事前に後悔できる能力を持っていて、その能力を最大限に活用することで目標の達成が可能になります。

事前の後悔をしよう

では、そんな事前の後悔ができるようになるためには何が必要でしょうか?これらを考えて実践することが大事になります。

  • 事前の後悔が必要な場合はいつかを知る
  • 事前の後悔を使う見込みが高いのはいつかを知る
  • 効果を高めるためにはどんな仕掛けにするのがベストかを知る

ただ、これらを実践する時に大事なことは、将来の自分を拘束する必要があることを理解するくらいには、自分自身のことが分かっていることです。一部の人は、コミットメント契約を使うくらい自分のことが分かっているけれども、ほとんどの人は、同じ事を何度も何度も繰り返しつつ今度こそはと期待だけし続けます。

できなかった過去の自分を認めることも、自分ができないと認めることも面白いことではありませんが、認識できることで、できるための方法を考えることができます。

ご紹介したブログのように、残念ながら過剰な自信もまた目標達成の妨げになりますので、自分を知るということは目標達成のためには重要なことです。

コミットメントを成功させる方法3つ

内なる争いに勝利できるよう生活を組み立てたり、事前に後悔できる方法を3つご紹介します。

損失を回避させたい気持ちを活用する

損失は利益よりも大きく見えてしまいます。人はすでに手元にあるものを手放すのが大嫌いという性質を持っています。

確かに、自分が決めたこととはいえ、罰金払ってお金を失うのもいやですし、公言して失敗して信頼をなくすのもいやだなあ。

損失を回避したいという気持ちが強い人ほどこのコミットメントは効果的ですね。

アメや鞭で行動は変わる。ただ、コミットメントを成功させるには損失忌避という人間の性質を考慮したフレーミングなど、細部に注意を払うのが重要。

『ヤル気の科学』121ページ

行動経済学者たちは、この損失に対する忌避をコミットメント契約やインセンティブ効果に活用することを推奨しますが、厳しすぎる鞭は、自分が決めたことであっても長続きしないという側面も持っています。

厳しすぎる鞭で成果が出る時もありますが、行動変化は長続きせず反動が起きます。

多くの目標は、それが難しいことだったりするほど時間が必要になります。そんな時に大事なことは継続です。

厳しすぎる鞭は継続を難しくすることもありますので、十分に注意して活用することが大事です。約束を守るためのコミットメント契約を過小評価して、過大な損失にコミットしてしまうことがあるので、迷った時には誰かに相談したり、時間をおくこともおすすめです。

実行前はどうしてあんなに自信満々なんでしょうかねえ。少なくとも誰かに相談するくらいの心と時間の余裕は持っておきたいです。

誰にチェックされたい?

アメと鞭だけでなく、コミットメントに関わる人も大事です。誰が成功判定するか、誰に成功や失敗を知られるか、誰が関係しているかで成功を決めることもあります。

インセンティブに対する人の反応は、予想外できないこともある。それは人が「人にどう思われるか」に大きく影響されるから。これは、コミットメントを考えるうえでとても重要だ。

『ヤル気の科学』160ページ

これは、よく分かります。ぼくも最初は家族にお願いして、でもやっぱりなあなあになってしまい、タスク管理パートナーさんにお願いしました。

関係性は確かに重要ですね。

自分の意志力は頼りにならなくても、頼りになる他人の意志力を活用することは目標達成のための重要な要素になりえます。

他人の意志力の弱さは見ればすぐに分かるし、「〇〇すればいいのに」というアドバイスもすぐに思いつくんですけどねえ・・・

コミットメント契約は、自分の行動を変えるのに役立つだけではなく、他人の行動を変えることのお手伝いもできるのですよ。

続けることと、意識すること

目標は達成するまで続けることで達成できます。続けるコツを5つご紹介します。

定期的な自己モニタリングの重要性。

それは「意識化」フィードバックを与えることだ。

『ヤル気の科学』192ページ

自己モニタリング、つまり記録や振り返りのことです。
行動している最中は意識が難しいこともあるので、毎日、3日に1度など目標に合わせたフィードバックを行っていきましょう。
記録を行うことで、改めて行動を意識することもできます。

適切な目標設定をすることも大切だ。

『ヤル気の科学』192ページ

あまりにも難しすぎる目標も、逆に簡単すぎる目標も適切ではありませんので、あなたにとって、ちょうどいい目標の設定がおすすめです。
目標設定について悩まれている方はこちらのブログも参考にしてください。

極端な目標を避ける方法として、見かけ上進捗していると成功しやすい。

『ヤル気の科学』192ページ

「本当に進んでいるのかな?上達しているのかな?」という不安があると取りかかりにくくなります。進捗の確認が難しい目標もありますが、できるだけ進捗が確認できる指標を作ると、「今日もできた」ことが確認でき、継続しやすいです。

こういった設定が難しいことも、タスク管理パートナーさんができた時に認めてくれるので、継続しやすくなっているのは有難いです!

ときには少し破ってもいい「柔軟なコミットメント」もありうる。

『ヤル気の科学』193ページ

きっちりと隙間なくやることを決めてしまうのは、気持ちの良いものですが、現実にはなかなか予定通りにいかないことが多いので、例外を決めておいたり、時には柔軟に対応することも大事です。
下記のブログでは、例外ルールについてご紹介しています。

目標を小さなものに区分けすると、成功確率を現実的にできる。

『ヤル気の科学』193ページ

目標や行動を小さくすることで動きやすくなります。これは、今までのブログにもたくさん書いています。その一つをご紹介します。

適切な困難さのある正しい目標を選択すること、さらにその目標に柔軟性を含めておくことも、コミットメントをはじめるときに極めて重要だ。

『ヤル気の科学』193ページ

始める前に誰かにアドバイスを求めるとより適切な目標設定ができそうですね。

コミットメントのし過ぎにも注意

目標を達成するための行動を行うことや、コミットメント契約を守ろうとする意志は、自制心を使います。自制心は限られたリソースで、使いすぎると枯渇してしまいます。

コミットメントしすぎることで人生の他の計画を阻害しないかよく考えることも大事です。人生にはインセンティブやコミットメントの手の届かないままにしておいた方が良い領域もあるということを忘れないようにすることも大事です。

何事もバランスが大事ですね。

コミットメントは嫌なことを先送りしてしまう問題も、楽しいことを早くやりすぎてしまう問題にも対応できます。そしてコミットメントには数多くの手段があるので、ぜひあなたにあった手段を見つけて、目標を達成してください。

自分を知ることも、バランスを考えることも、客観的に考えることが重要になります。
ベーシックサポートプランでまずは1ヵ月、定期的な自己モニタリングをタスク管理パートナーがお手伝いします。